素材-その形と心 The Material―Its Form and Spirit in ISETAN SHINJUKU
南條史生氏がキュレーションを手がける「素材ーその形と心The Material―Its Form and Spirit in ISETAN SHINJUKU」を開催いたします。
6名の作家による、素材に焦点を当てた現代美術作品の数々を是非ご高覧ください。
アートは素材と技術から出来ている。
その半分を占める素材は、作品制作の鍵を握る。素材は植物や生物由来の場合もあるし、鉱物や水のようなものもある。
それが想像と創造によって、人の手による人工物に変わる。それがアートだ。アートの対極は自然ということになる。アートに人は思いを込める。アートは自然と人工と想念の間で宙づりになっている。
この展覧会に出展される作品は、堅い素材、柔らかい素材、色のあるもの、無彩色のものなどいろいろである。
共通点を探るより、多様性である。
西川勝人は鉛を使う。
重くて鈍い色合いだが、金属としてはやわらかく、暖かい触感がある。
鉛に封じ込められ、灰色の霞に遮られて茫洋としたドイツの風景はロマンティックだ。
小林且典は、ブロンズを使う。
ブロンズは黒にも金色にも、緑にさえ変身できる謎の金属だ。
重々しい山が登場するがそれは、ミニアチュールのように世界の隠喩だ。
高須賀活良は繊維を使う。
植物繊維は変幻自在だ。
それが形態を作り上げ、立体に立ち上がる。
衣服から彫刻までの遊びの探求。
藤崎了一は、ウレタンのブロックを鋭利な稜線でカットする。
そこには立体のボリュームが削り出されて彫刻が生まれる。
その彫刻は時には赤く、時には黄色や青で塗られている。
まだ誰も試したことのなかった彫刻の技法。そこに人口が立ち上がる。
多様性は楽しいし、これからの世界の有り様だろう。
思いつくまま、出会った素材の味を楽しむ作品展。お楽しみください。
南條 史生
■南條 史生 Fumio Nanjo
キュレーター・美術評論家
1949年東京都生まれ
1972年慶應義塾大学経済学部
1977年文学部哲学科美学美術史学専攻卒業
1978-86年国際交流基金職員を経て1986-90年ICAナゴヤディレクター
1990年ナンジョウアンドアソシエイツ㈱(現エヌ・アンド・エー㈱)設立
2002年迄及び2014年以降代表取締役
2002年森美術館開設に副館長として参画
2006年11月-2019年同館館長
2020年より同館特別顧問
国際的な展覧会、審査員の経験として、ヴェニス・ビエンナーレ日本館(1997)および台北ビエンナーレ(1998)のコミッショナー、ターナー・プライズ審査委員(ロンドン、1998)、横浜トリエンナーレ(2001)、シンガポール・ビエンナーレ アーティスティック・ディレクター(2006、2008)、茨城県北芸術祭総合ディレクター(2016)、ホノルル・ビエンナーレ キュラトリアル・ディレクター(2017)、北九州未来創造芸術祭-ART for SDGs-(2021)ディレクター等を歴任。
著書に「美術から都市へ~インディペンデントキュレーター15年の軌跡~」(鹿島出版会/1997)、「疾走するアジア~現代美術の今を見る~」 (美術年鑑社/2010)、「アートを生きる」(角川書店/2012)がある。
■主催 春日秀之 (gallery de kasuga オーナー) ■出展作家 小林 且典 高須賀 活良 竹内 絋三 西川 勝人 藤崎 了一 松浦 延年 ■企画協力 エヌ・アンド・エー株式会社 ■会期 2022年6月29日(水) ~ 2022年7月12日(火) [7月5日(火)・最終日午後6時終了] ■会場 伊勢丹新宿店 本館6階 アートエディション (東京都新宿区新宿3丁目14−1)